上の前歯の中心が左にずれていること、左右で歯の本数が違うことを気にされて来院された30代女性の患者様です。
検査を行ったところ、上顎左側第二小臼歯が生まれつき欠損しており、左右の歯の本数に差がある状態でした。
その影響で、上の前歯の中心が左側へずれ、さらに前歯の一部には反対咬合や切端咬合が生じていました。
見た目の中心のズレだけでなく、噛み合わせ全体のバランスにも影響している状態だったため、今回はブラケット治療を中心に、上下の歯列全体のバランスを整える矯正治療を行いました。
目次
はじめに ― 前歯の真ん中のズレ・噛み合わせが気になる方へ
鏡を見たときに、上の前歯の中心とお顔の中心がずれているように感じたり、上下の前歯の真ん中が合っていないことが気になったりする方がいらっしゃいます。
前歯の中心のズレは、見た目の印象に関わるだけでなく、歯の本数の違いや噛み合わせ、歯列全体のバランスが関係している場合があります。
特に、生まれつき永久歯の本数が少ない「先天性欠如」がある場合、左右の歯の本数に差が生じることで、歯が少ない側へ歯列が引っ張られるようにずれてしまうことがあります。
その結果、前歯の真ん中がずれるだけでなく、一部の前歯が反対に噛んでしまう反対咬合や、上下の歯の先端同士が当たる切端咬合が起こることもあります。
今回ご紹介するのは、上顎左側第二小臼歯の先天性欠如により、上の前歯の中心が左側へずれていた患者様の症例です。
歯の本数の左右差をふまえたうえで抜歯計画を立て、前歯の正中のズレと噛み合わせを改善しました。
初診時の状態

・上の前歯の中心が左にずれている
・左右で歯の本数が違うことを気にされている
・上顎左側第二小臼歯が生まれつき欠損している
・部分的に前歯が反対に噛んでいる
・上下の前歯にガタつきがある
初診時は、上顎前歯の正中が左方へ偏位している状態でした。
上顎左側第二小臼歯が欠損していたことで、左右の歯の本数に差が生じ、歯が少ない左側へ前歯が偏位していました。
また、歯の本数が少ない影響は左側へのズレだけではありませんでした。上顎前歯は内側にも入り込むように偏位しており、その影響で部分的な反対咬合や切端咬合もみられました。
つまり、今回の症例では、単に前歯の真ん中を合わせるだけではなく、歯の本数・歯列の位置・上下の噛み合わせを総合的に整える必要がある状態でした。
歯の本数の違いによって前歯の中心がずれることがあります
前歯の真ん中がずれる原因は、歯並びのガタつきだけとは限りません。
今回のように、生まれつき永久歯が欠損している場合、左右で歯の本数が異なるため、歯列全体のバランスが崩れやすくなります。
上顎左側第二小臼歯が欠損していることで、左側の歯の数が少なくなり、そのスペースの影響を受けて上の前歯が左側へ移動していました。
このような場合、見た目としては「前歯の中心がずれている」と感じられますが、実際には歯の本数の左右差によって歯列全体が偏位している状態です。
そのため、単純に前歯だけを動かすのではなく、歯数のバランスを整えながら、前歯を正しい位置へ戻す治療計画が必要になります。
歯の本数の違いが原因で前歯の中心がずれている場合、左右の歯数や噛み合わせを考慮した矯正治療が重要です。
まずは歯の本数と噛み合わせのバランスを整えることから
今回の症例で大切だったのは、上顎前歯の正中をただ右側へ動かすだけではなく、上下の歯の本数や噛み合わせを含めて治療計画を立てることでした。
上顎では、左側の第二小臼歯が欠損していたため、右側の第一小臼歯を抜歯することで左右の歯数をそろえ、左側へ偏位していた前歯を正中へ戻す必要がありました。
また、上顎の歯数に合わせて下顎のバランスも整える必要がありました。
下顎では、左右側第一小臼歯を抜歯し、下顎前歯を後方へ移動させることで、反対咬合や叢生の改善を図りました。
このように、上顎だけでなく下顎の歯列も含めて整えることで、前歯のズレと噛み合わせの両方を改善していきました。
治療の流れ:上顎歯列正中左方偏位を矯正治療で改善した症例
今回の治療のゴールは、
・左にずれていた上の前歯の中心を改善する
・左右の歯数のバランスを整える
・反対咬合や切端咬合を改善する
・歯列全体で均等に噛める噛み合わせをつくる
という4点です。
① 精密検査で正中のズレと歯数のバランスを確認
まずは、上顎前歯の正中がどの程度左側へずれているか、上下の噛み合わせにどのような影響が出ているかを確認しました。
また、上顎左側第二小臼歯が先天的に欠損していることも確認し、左右の歯数の差が正中のズレに関係していると判断しました。
矯正治療では、見た目のズレだけでなく、その原因を確認することが大切です。
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② 抜歯計画を立て、左右の歯数を調整
上顎では、左側第二小臼歯が欠損していたため、右側第一小臼歯を抜歯し、左右の歯数をそろえる計画としました。
これにより、左側へ偏位していた上顎前歯を正中方向へ戻しやすい状態をつくりました。
さらに、上顎の歯数に合わせて下顎の歯列も整えるため、下顎左右側第一小臼歯を抜歯し、下顎前歯を後方へ移動する計画を立てました。
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③ ブラケット治療とパラタルアーチを使用
抜歯が必要であり、前歯の移動量も大きかったため、今回はブラケット治療を選択しました。
また、上の奥歯を固定するためにパラタルアーチを使用しています。
パラタルアーチは、上顎の奥歯を安定させるために使用する装置で、前歯を計画通りに動かす際の固定源として役立ちます。
移動量が大きい症例では、どの歯をどの方向へ動かすかだけでなく、動かしたくない歯を安定させることも重要になります。
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④ 上顎前歯を右方へ移動し、正中のズレを改善
上顎では、左側へ偏位していた前歯を右方へ移動し、上顎前歯の正中を改善していきました。
左右の歯数をそろえたうえで歯を移動することで、前歯の中心をより自然な位置へ近づけることができます。
前歯の正中の改善は、見た目の印象にも関わるため、歯の移動量や歯列全体のバランスを確認しながら慎重に進めました。
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⑤ 下顎前歯を後方へ移動し、反対咬合と叢生を改善
下顎では、左右側第一小臼歯を抜歯したスペースを利用し、下顎前歯を後方へ移動しました。
これにより、部分的に生じていた反対咬合や、上下の前歯のガタつきの改善を図りました。
下顎前歯の位置を整えることで、上下の前歯の当たり方も改善し、噛み合わせ全体のバランスが整いやすくなります。
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⑥ 歯列全体で均等に噛める状態へ調整
治療の仕上げでは、前歯だけでなく、歯列全体で均等に噛めるように噛み合わせを調整しました。
また、上顎左側第一小臼歯のクラウンの辺縁が破折していたため、矯正治療終了後にクラウンを再製しています。
矯正治療後に被せ物の形を整えることで、見た目だけでなく機能面でもより安定した口腔環境を目指しました。
矯正治療を行ううえでお伝えした注意点
今回の症例では、前歯の移動量が大きく、抜歯を伴う矯正治療が必要でした。
そのため、治療開始前には、治療の目的や期間、装置による違和感、矯正治療に伴うリスクについて丁寧にご説明しました。
① 抜歯が必要になること
歯の本数の左右差や上下の噛み合わせを整えるため、今回の症例では抜歯を伴う治療が必要でした。抜歯を行う目的は、単に歯を並べるスペースを作るだけでなく、前歯の正中のズレや噛み合わせのバランスを改善することにあります。
② 治療期間が長くなることがある
前歯の移動量が大きく、歯列全体のバランスを整える必要がある症例では、治療期間が長くなることがあります。本症例では、約3年の治療期間が必要でした。
③ 装置に慣れるまで違和感が出ることがある
ブラケット装置やパラタルアーチを装着すると、最初は話しづらさや食事のしづらさ、舌の違和感を感じることがあります。多くの場合は少しずつ慣れていきますが、痛みや装置の当たりがある場合には調整が必要です。
④ 治療中は歯磨きを丁寧に行うこと
矯正装置の周囲には汚れが溜まりやすくなります。装置が付いている期間は歯磨きが難しくなるため、毎日のセルフケアや定期的なクリーニングが大切です。
⑤ 歯肉退縮や歯根吸収のリスクがあること
矯正治療では、歯を動かすことで歯ぐきが下がる歯肉退縮や、歯根が短くなる歯根吸収が起こる可能性があります。治療中はレントゲン検査などで状態を確認しながら慎重に進めます。
治療後の症例写真

治療後は、左側へずれていた上顎前歯の正中が改善し、前歯の見た目のバランスが整いました。
また、部分的に生じていた反対咬合や切端咬合も改善し、上下の前歯がより自然に噛み合う状態になりました。
上下の前歯のガタつきも改善され、歯磨きがしやすい口腔環境へ変化しています。
今回の症例では、歯の本数の左右差により生じていた前歯のズレに対し、抜歯を含めた矯正治療を行うことで、審美面と機能面の両方の改善を目指しました。

今回のケースでの自費診療の費用
| 治療内容 | 数量 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 検査 | 1回 | 55,000円 | 初診時 |
| 診断 | 1回 | 33,000円 | 治療計画立案 |
| 矯正初期費用 | 1式 | 880,000円 | ブラケット治療 |
| 処置料 | 約36回 | 4,400円/回〜 | 月1回 |
| レントゲン検査 | 年1回 | 16,500円 | 治療経過確認 |
※治療期間は約3年、通院回数は約36回です。
※矯正歯科治療は、公的健康保険の対象外となる自由診療(自費診療)です。
※治療内容や期間、使用する装置により費用は変動する場合があります。
上顎歯列正中左方偏位を矯正治療で改善するメリット・デメリット
前歯の中心のズレを改善できる
歯の本数や歯列の偏位をふまえて治療を行うことで、左側へずれていた上顎前歯の正中を改善できます。見た目のバランスが整い、笑ったときの印象改善にもつながります。
反対咬合や切端咬合の改善が期待できる
前歯の位置を整えることで、部分的に反対に噛んでいた部分や、歯の先端同士が当たる噛み合わせの改善が期待できます。
歯列全体で噛みやすい状態を目指せる
前歯だけでなく上下の歯列全体のバランスを整えることで、均等に噛める噛み合わせを目指せます。
清掃しやすい口腔環境につながる
上下の前歯のガタつきが改善されることで、歯磨きがしやすくなり、磨き残しの軽減にもつながります。
抜歯が必要になる場合がある
歯の本数の左右差や歯列の偏位を改善するため、症例によっては抜歯が必要になることがあります。
治療期間が長くなることがある
前歯の移動量が大きい場合や、噛み合わせ全体を整える必要がある場合は、治療期間が数年単位になることがあります。
装置による違和感がある
ブラケット装置やパラタルアーチを使用するため、装着初期には話しづらさや食事のしづらさを感じることがあります。
歯肉退縮や歯根吸収のリスクがある
矯正治療では、歯を動かすことにより歯ぐきが下がる歯肉退縮や、歯根が短くなる歯根吸収が起こる可能性があります。
まとめ:前歯の真ん中のズレ・噛み合わせが気になる方へ
前歯の中心のズレは、見た目だけの問題に見えることがあります。
しかし、今回のように生まれつき歯が1本足りないことで左右の歯の本数に差がある場合、歯列全体が歯の少ない側へずれてしまい、前歯の真ん中のズレや反対咬合につながることがあります。
本症例では、上顎左側第二小臼歯の欠損によって上顎前歯が左側へ偏位していました。
そこで、上顎右側第一小臼歯と下顎左右側第一小臼歯を抜歯し、歯の本数と噛み合わせのバランスを整えながら矯正治療を行いました。
その結果、左にずれていた前歯の正中や、部分的に反対に噛んでいた前歯の噛み合わせが改善し、歯列全体で噛みやすい状態へ整えることができました。
前歯の真ん中のズレは、歯の本数や噛み合わせが関係している場合があるため、見た目だけで判断せず、原因を正確に診断することが大切です。
当院には日本矯正歯科学会認定医が在籍しており、歯並びの見た目だけでなく、噛み合わせや歯の移動量、治療後の安定性まで考慮したうえで、患者様に合った治療方法をご提案しています。
前歯の中心がずれている、左右で歯の本数が違うと言われた、前歯が反対に噛んでいる、上下の歯並びのガタつきが気になるという方は、一度現在のお口の状態を確認してみることをおすすめします。
まずは当院にお気軽にご相談ください。
本記事は、ササキ歯科・ササキ矯正歯科の歯科医師が監修しています。
矯正治療では、見た目だけでなく噛み合わせや治療後の安定性まで考慮し、患者様のお口の状態に合わせた治療計画をご提案しています。
佐々木 智章
院長・歯科医師
佐々木 智章
略歴
- 2010年
- 愛知学院大学歯学部卒業
- 2011年
- 愛知学院大学臨床研修医
- 2012年
- アップルデンタルクリニック勤務医
- 2014年
- ササキ歯科・ササキ矯正歯科勤務
資格・所属学会
- 愛知県歯科医師会
- 名古屋市東区歯科医師会
- MDIベーシックコース
- MDIインプラントコース
- ストローマンインプラントコース
- CAD/CAM Curving & Polishing
- CAD/CAM Preparation & Training
- アストラテックインプラントシステムベーシックコース
- 顎咬合学会
- LCDCベーシックコース
佐々木 美枝
副院長・矯正歯科医
佐々木 美枝
略歴
- 2012年
- 朝日大学歯学部卒業
- 2017年
- 朝日大学大学院歯科矯正学講座卒業
- 2017年
- 朝日大学医科歯科医療センター ポストドクター
- 2022年
- ササキ歯科ササキ矯正歯科 常勤医師
資格・所属学会
- 歯学博士
- 日本矯正歯科学会認定医
- 日本矯正歯科学会
- 近畿東海矯正歯科学会
