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目立ちにくい装置で歯のガタガタを改善|ハーフリンガル矯正の症例

「口が閉じにくい」「歯のガタガタが気になる。でも、矯正装置はなるべく目立たせたくない」。今回ご紹介するのは、このようなご希望で来院された16歳女性の患者さまです。

名古屋市東区のササキ歯科・ササキ矯正歯科では、歯並びや噛み合わせの状態に加え、治療中の見た目や生活上のご希望も伺いながら治療方法を検討しています。

本症例では、上下4本の小臼歯を抜歯し、上の歯は裏側、下の歯は表側に装置をつける「ハーフリンガル矯正」を選択しました。約3年・約36回の通院で歯並びと噛み合わせを整えた経過と、装置を選ぶ際の考え方をご紹介します。

初診時の状態|歯のガタガタと口の閉じにくさ

初診時には、上下の歯が重なり合う「叢生(そうせい)」と、口元の突出が認められました。歯がきれいに並ぶためのスペースに加え、前歯を後ろへ動かすためのスペースも必要な状態でした。

ハーフリンガル矯正前の口腔内写真。上下の歯列に歯の重なりがみられる
治療前:上下の歯並び、前歯の重なり、左右の噛み合わせを確認します。

・初診時の年齢・性別:16歳女性
・主なお悩み:口が閉じにくい、歯のガタガタが気になる
・治療へのご希望:なるべく目立たない装置を使いたい
・治療計画上の課題:歯を並べるスペースと、前歯を後ろへ動かすスペースの確保

口の閉じにくさには、前歯の位置のほか、顎の骨格や唇の状態などが関係する場合もあります。見た目が似ている歯並びでも治療方法は同じとは限らないため、口腔内写真だけで判断せず、検査結果をもとに計画を立てます。

ハーフリンガル矯正とは?上は裏側、下は表側に装置をつける方法

ハーフリンガル矯正は、上の歯に裏側のワイヤー装置、下の歯に表側のワイヤー装置を使用する治療方法です。歯の裏側に装置をつける矯正を「リンガル矯正」または「舌側矯正」と呼びます。

上下とも裏側に装置をつける方法に対し、ハーフリンガルでは下の装置を表側に置きます。上の前歯の装置を見えにくくしながら、下の歯の裏側で装置が舌に触れることを避けられるのが特徴です。

なぜ下の歯は表側にするのですか?

下の歯の裏側にも装置をつけると、舌に触れて話しにくさや口内炎につながることがあります。当院では、こうした負担と装置の目立ちにくさの両方を考慮し、ハーフリンガル矯正をご提案することがあります。

下の歯は唇に隠れる部分もありますが、会話中や笑ったときには装置が見えることがあります。見え方は唇の動きや歯の見える範囲によって異なります。「まったく見えない装置」ではないことも含め、写真や実際の装置を確認しながら検討しましょう。

ハーフリンガル矯正の正面写真。下の歯の表側にブラケットとワイヤーが装着されている
正面からの装置の見え方。上の歯の表側にはブラケットをつけず、下の歯には表側の装置を使用します。
上顎の裏側に装着したリンガルブラケットと補助装置の口腔内写真
上の歯の裏側の装置。歯を動かすブラケットに加え、本症例では奥歯の固定を補助する装置も使用しました。

装置の写真は口を開き、唇をよけて撮影しています。日常の会話や笑顔での見え方とは異なります。

本症例で抜歯とハーフリンガル矯正を選んだ理由

歯を並べるだけでなく、前歯を後ろへ動かす必要があったため

本症例では歯のガタガタが大きく、口元の突出も認められたため、上下左右の第一小臼歯を1本ずつ、合計4本抜歯する計画としました。第一小臼歯は、前から数えて4番目の歯です。

上顎では、抜歯でできたスペースを使って前歯を後方へ移動し、出っ歯の改善を図りました。下顎では、前歯の重なりを解消するためにスペースを利用しました。

裏側の装置を使うこと自体が、抜歯の理由になるわけではありません。抜歯の必要性は、歯の重なりの程度、前歯の位置、顎の骨や噛み合わせなどから判断します。

歯の移動と治療中の見た目を両立するため

装置が目立ちにくい治療には、マウスピース矯正もあります。ただし、前歯を大きく後ろへ動かすなど、歯の移動量や動かし方によっては、ワイヤー装置が適している場合があります。

本症例では、抜歯したスペースを利用して歯の位置や傾きを調整する必要があることと、「なるべく目立たない装置にしたい」というご希望から、ハーフリンガル矯正を選択しました。マウスピース矯正の適応も含め、装置は見た目だけで決めず、必要な歯の移動に合うかを確認します。

アンカースクリューで奥歯の固定を補助

前歯を後ろへ動かすときには、支えとなる奥歯の位置も管理する必要があります。本症例では、上顎にパラタルアーチと歯科矯正用アンカースクリュー2本を併用しました。

パラタルアーチは上顎の内側に設ける補助装置、アンカースクリューは歯を動かす際の支えとして骨に設置する小さなねじです。これらを利用して奥歯の固定を補助しました。すべてのハーフリンガル矯正で同じ装置が必要になるわけではありません。

治療の流れ|抜歯したスペースを使い、歯並びと噛み合わせを調整

今回の治療では、上の前歯を後ろへ動かすこと、下の前歯の重なりを整えること、歯列全体で噛める状態にすることを目標としました。治療内容を順にご紹介します。

① 歯並び・噛み合わせと装置のご希望を確認

歯の重なりと口元の突出を踏まえ、抜歯を伴う治療を計画しました。治療中の見た目へのご希望も考慮し、上顎を裏側、下顎を表側から動かす方針としました。

② 上下左右の第一小臼歯を計4本抜歯

上顎の左右2本、下顎の左右2本を抜歯し、歯を動かすためのスペースを確保しました。上顎は前歯の後方移動、下顎は前歯のガタガタの改善にスペースを利用しました。

③ ハーフリンガル装置と固定のための補助装置を使用

上の歯の裏側と下の歯の表側にブラケットを装着しました。上顎にはパラタルアーチとアンカースクリュー2本を併用し、奥歯の固定を補助しました。

④ 前歯の位置と歯の重なりを調整

上の前歯を後方へ移動しながら、上下の歯の重なりを整えました。前歯だけがそろう状態ではなく、上下の歯が噛み合う位置関係をつくっていきます。

⑤ 歯列全体の噛み合わせを仕上げ

上下の歯の前後的なズレと、左右の奥歯を含めた噛み合わせを調整しました。本症例の治療期間は約3年、通院回数は約36回です。

治療後の変化と症例概要

治療後は上下の歯の重なりが整い、前後的な歯のズレを改善しました。前歯から奥歯まで、歯列全体で均等に噛めるように噛み合わせを調整しています。

ハーフリンガル矯正後の口腔内写真。上下の歯の重なりと噛み合わせを整えた状態
治療後:歯の重なりを整え、上下の歯の位置関係と左右の噛み合わせを調整した状態です。

治療前後の写真では、正面の歯並びだけでなく、上下の歯列の形や、左右から見た噛み合わせも比較できます。口腔内写真には唇を閉じた状態が写っていないため、口の閉じやすさや横顔の変化は、写真だけで評価できるものではありません。

本症例の治療内容

ハーフリンガル矯正を行った症例の概要
初診時 16歳女性
主なお悩み 口が閉じにくい、歯のガタガタが気になる、装置を目立たせたくない
主な状態 上下の歯の重なり(叢生)、口元の突出・出っ歯
治療方法 ハーフリンガル矯正(上顎は裏側・下顎は表側のブラケット装置)
抜歯部位 上下左右の第一小臼歯、計4本
補助装置 上顎のパラタルアーチ、アンカースクリュー2本
期間・通院回数 約3年・約36回
費用 検査55,000円、診断33,000円、初期費用1,050,000円、処置料4,400円〜/回、年1回のレントゲン検査16,500円
主なリスク・副作用 歯肉退縮、歯根吸収、装置による痛み・口内炎・話しにくさ、むし歯・歯周病、アンカースクリュー周囲の炎症や脱落、後戻りなど

本症例は公的健康保険の対象外となる自由診療です。治療内容・期間・結果には個人差があります。費用の内訳とリスクの詳細は、続く項目をご覧ください。

治療期間と費用|本症例は約3年・約36回の通院

本症例の治療期間は約3年でした。歯の移動量や動き方、通院状況などによって期間は変わるため、ハーフリンガル矯正であればすべて同じ期間で終わるわけではありません。

今回のケースでの自費診療の費用

本症例の費用内訳は以下のとおりです。初期費用のほかに、毎回の処置料と治療経過を確認するためのレントゲン検査費用がかかります。

本症例の治療費内訳
項目 数量・頻度 金額 内容
検査 1回 55,000円 治療前の精密検査
診断 1回 33,000円 診断・治療計画
矯正初期費用 1式 1,050,000円 ハーフリンガル矯正
処置料 月1回・約36回 4,400円〜/回 装置の調整など
レントゲン検査 年1回 16,500円/回 治療経過の確認

スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

上記は本症例の記録に基づく費用です。現在の料金や個別の治療費は、治療内容・使用する装置によって異なります。抜歯、アンカースクリュー、保定装置などの費用がどこまで含まれるかも、治療開始前にご確認ください。現在の一般的な料金は大人の矯正・治療費のご案内に掲載しています。

ハーフリンガル矯正のメリット・デメリットと注意点

治療方法を選ぶ際には、装置の目立ちにくさだけでなく、話しやすさやお手入れ、費用、歯を動かすことに伴うリスクも確認しておくことが大切です。

選ぶ前に知っておきたい特徴

メリット

上の歯の装置が見えにくい
上の前歯の表側にはブラケットをつけずに治療できます。

抜歯を伴う治療にも対応を検討できる
ワイヤーを使い、歯の位置や傾きを調整します。適応は診断によって判断します。

下の歯の裏側で装置が舌に触れることを避けられる
下顎を表側の装置にすることで、舌の動きへの影響に配慮します。

デメリット

下の歯の装置は見えることがある
口の開け方や笑い方によって、ブラケットやワイヤーが見えます。

上顎の装置による話しにくさがある
裏側の装置や補助装置に慣れるまで、発音や舌の動きに影響する場合があります。

費用と日々のケアへの配慮が必要
表側矯正と比べて費用が高くなる傾向があり、見えにくい部分の歯磨きも必要です。

治療に伴う主なリスクと、通院中に気をつけたいこと

① 歯肉退縮・歯根吸収

歯を動かすことで歯ぐきが下がる「歯肉退縮」や、歯の根が短くなる「歯根吸収」が起こる可能性があります。本症例では、上の前歯を後方へ移動することに伴うリスクとして挙げられます。

② 装置による痛み・口内炎・話しにくさ

装着直後や調整後には歯の痛みや圧迫感が出ることがあります。舌や頬に装置が当たり、口内炎や話しにくさが生じる場合もあります。強い痛みが続く、ワイヤーが刺さる、装置が外れたといったときは、次の予約を待たずに医院へご連絡ください。

③ 歯磨きの難しさと、むし歯・歯周病

特に上の歯の裏側は見えにくく、装置の周囲に汚れが残りやすくなります。歯ブラシに加え、必要に応じてタフトブラシや歯間ブラシなどを使い、磨き方の指導と定期的なクリーニングを受けましょう。

④ 抜歯・アンカースクリューに伴う負担

抜歯後には痛み・腫れ・出血などが起こる場合があります。アンカースクリューにも設置時の痛み、周囲の炎症、緩みや脱落などのリスクがあり、状態によっては再設置や治療計画の変更が必要です。

⑤ 治療期間の延長と、治療後の後戻り

歯の動き方や装置の状態、通院状況によっては治療が長引くことがあります。装置を外した後も、歯並びを維持するための保定装置(リテーナー)と定期的な確認が必要です。保定装置の種類・使用時間・期間は、担当医の指示に従ってください。

このほか、金属などによるアレルギーや、歯・歯周組織の状態に応じた問題が生じる場合があります。個別のリスクは検査結果とあわせてご説明します。

ハーフリンガル矯正についてよくあるご質問

Q1. 裏側矯正なら、周囲に気づかれませんか?

装置が目立ちにくい方法ですが、気づかれないことを保証するものではありません。ハーフリンガルでは下の歯に表側の装置をつけるため、会話中や笑ったときに見えることがあります。

Q2. 歯のガタガタが大きくても、ハーフリンガル矯正はできますか?

適応になる場合があります。本症例では上下4本の抜歯でスペースを確保しましたが、必要な処置は患者さまによって異なります。歯の移動量や骨・歯ぐきの状態、噛み合わせを調べて判断します。

Q3. 抜歯が必要なら、マウスピース矯正はできないのですか?

抜歯の有無だけで決まるわけではありません。どの歯をどの方向へ動かすか、歯の傾きや歯根の位置をどこまで調整するかなどを踏まえて判断します。本症例では必要な歯の移動と装置の見た目を考慮し、ハーフリンガル矯正を選択しました。

Q4. 装置を外したら、治療は終わりですか?

歯を動かした後には、整えた歯並びを維持する「保定」が必要です。後戻りを防ぐため、保定装置を指示どおりに使用し、定期的に歯並びや噛み合わせを確認します。

まとめ|装置の見た目と、必要な歯の動かし方を一緒に考える

本症例では、歯のガタガタと口元の突出に対し、上下4本の抜歯とハーフリンガル矯正を行いました。上顎の固定を補助しながら前歯を後方へ動かし、歯列全体の噛み合わせを整えています。

「なるべく目立たずに治療したい」というご希望と、お口の状態に合う治療計画の両方を大切にすることが、装置選びの出発点です。ご相談の際には、気になる歯並びとあわせて、学校や仕事で人前に出る機会、発音への不安などもお聞かせください。

名古屋市東区・久屋大通駅近くのササキ歯科・ササキ矯正歯科では、裏側のワイヤー装置やマウスピース型の装置を含め、お口の状態に応じた矯正治療をご案内しています。

目立ちにくい矯正装置をご希望の方へ

矯正相談の予約について

矯正歯科受付:052-961-0033

この記事の執筆・監修者

本記事は、ササキ歯科・ササキ矯正歯科の歯科医師が監修しています。
矯正治療では、見た目だけでなく噛み合わせや治療後の安定性まで考慮し、患者さまのお口の状態に合わせた治療計画をご提案しています。

ササキ歯科・ササキ矯正歯科 院長 佐々木智章
院長・歯科医師
佐々木 智章

院長・歯科医師

佐々木 智章

歯科医師一般歯科・補綴・インプラント

一般歯科治療をはじめ、補綴治療やインプラント治療など、幅広い歯科治療に対応しています。
矯正歯科と一般歯科を併設しているため、虫歯治療やクリーニング、被せ物の治療なども含め、同じ院内で連携した治療を行えるよう努めています。

略歴

2010年
愛知学院大学歯学部卒業
2011年
愛知学院大学臨床研修医
2012年
アップルデンタルクリニック勤務医
2014年
ササキ矯正デンタルオフィス勤務

資格・所属学会

  • 愛知県歯科医師会
  • 名古屋市東区歯科医師会
  • MDIベーシックコース
  • MDIインプラントコース
  • ストローマンインプラントコース
  • CAD/CAM Curving & Polishing
  • CAD/CAM Preparation & Training
  • アストラテックインプラントシステムベーシックコース
  • 顎咬合学会
  • LCDCベーシックコース
ササキ歯科・ササキ矯正歯科 副院長 佐々木美枝
副院長・矯正歯科医
佐々木 美枝

副院長・矯正歯科医

佐々木 美枝

日本矯正歯科学会認定医歯学博士

自身も子供のころに矯正治療を受けた経験があり、子供の頃の治療の大切さや矯正治療中のお悩みなど、患者さまの気持ちに寄り添った治療を大切にしています。
大学病院では子供から大人まで幅広い年齢層の治療を経験し、成人矯正ではワイヤーブラケット矯正、マウスピース矯正、骨格的異常を伴う外科的矯正にも対応しています。

略歴

2012年
朝日大学歯学部卒業
2017年
朝日大学大学院歯科矯正学講座卒業
2017年
朝日大学医科歯科医療センター ポストドクター
2022年
ササキ歯科ササキ矯正歯科 常勤医師

資格・所属学会

  • 歯学博士
  • 日本矯正歯科学会認定医
  • 日本矯正歯科学会
  • 近畿東海矯正歯科学会