
「子どもがいつも口を開けている」「舌で前歯を押してしまう」「最近、食事でむせたり発音しづらかったりする」。年齢によって悩みは違っても、舌や唇の働きが関係していることがあります。
舌は味を感じるだけでなく、食べ物をまとめる、飲み込む、発音するといった動きを担っています。何もしていないときの舌の位置や、飲み込むときの癖は、歯並びや噛み合わせを考えるうえでも見逃せません。
こうしたお口の使い方を見直す方法の一つが、MFT(口腔筋機能療法)です。子どものためだけのものではなく、大人の舌の癖や矯正治療にも関わります。年齢とともに変化するお口の機能には、状態に合った体操や歯科治療を考えることも大切です。
今回は、舌の体操の基本と子ども・大人それぞれの相談の目安を、名古屋市東区のササキ歯科・ササキ矯正歯科がご紹介します。
舌の体操「MFT」は何に役立つ?

MFTは、舌・唇・頬などの動きや位置を整えるためのトレーニングです。筋力をつけることだけが目的ではありません。食べるときや話すとき、何もしていないときにも、お口を無理なく使える状態を目指します。
舌を動かす練習と、普段の癖を見直すこと
体操をしている間は上手に舌を動かせても、普段は前歯を押していたり、上下の歯の間に舌を挟んでいたりすることがあります。MFTでは、その場で動きができるようになることに加えて、日常の癖を少しずつ見直していきます。
例えば、舌先を置く場所を覚える、唇を必要以上に力ませず閉じる、舌を前に突き出す飲み込み方を見直すといった練習です。必要な内容は、お口の状態や年齢によって変わります。
歯並びは舌・唇・頬から受ける力とも関係します
歯には内側から舌、外側から唇や頬の力がかかっています。特に、休んでいるときにも舌で前歯を押すような状態が続くと、歯並びや噛み合わせに影響する場合があります。歯並びには骨格や歯の大きさ、生え方なども関わるため、舌の癖だけで原因は決まりません。
POINT
舌の体操だけで、どのような歯並びも治せるわけではありません。MFTはお口の機能や癖を整える方法です。歯を動かす治療が必要かどうかは、歯並び・噛み合わせとあわせて判断します。
舌の体操のやり方|正しい位置と基本の練習

まずは鏡の前で肩や顎の力を抜き、今の舌の位置を確かめてみましょう。以下は基本的な練習の例です。痛みや動かしにくさがある方、飲み込みに不安がある方は、先に歯科医師へ相談してください。
① 舌先の置き場所「スポット」を覚える
MFTでは、上の前歯のすぐ後ろにある小さなふくらみ付近を、舌先を置く場所の目安にします。「スポット」と呼ばれる位置です。下の前歯の裏や、前歯そのものを押す位置ではありません。
舌先をそっとスポットに近づけ、歯を押していないか確認します。舌は上顎側に無理なく収めることを意識し、強く押しつけ続けたり、奥歯を噛みしめたりしないようにしましょう。
| 舌 | 前歯を押さず、上顎側に無理なく収まっているか |
|---|---|
| 唇 | 強く力を入れなくても、軽く閉じられるか |
| 上下の歯 | 噛みしめず、少し離れているか |
| 呼吸 | 鼻から楽に呼吸できるか |
鼻が詰まっているのに口を閉じ続ける必要はありません。舌が届かない、顎に力が入る、息苦しいといった場合は、無理に形をまねる前に原因を確認しましょう。
② 舌を持ち上げる「ポッピング」
ポッピングは、舌を上顎につけてから離す練習です。舌を持ち上げる感覚をつかむために、MFTで用いられます。
- 舌先の位置を意識しながら、舌を上顎に吸いつけるようにします。
- 舌をつけたまま、痛みのない範囲でゆっくり口を開きます。
- 舌を上顎から離し、「ポン」と音を出します。
大きな音を出す競争にする必要はありません。舌をつけにくいからと顎を大きく開けたり、舌の裏側を無理に伸ばしたりしないでください。回数や練習時間は、歯科医院で動きを確認してから決めると取り組みやすくなります。
③ 唇と舌を動かす「あいうべ体操」
口の周りと舌を動かす方法として、あいうべ体操も知られています。「あ」で口を縦に開き、「い」で横に広げ、「う」で唇を前に突き出し、「べ」で舌を前から下の方向へ出します。声を出さずに動かしてもかまいません。
一つずつ、痛みのない範囲でゆっくり行いましょう。回数をこなすために顎を大きく開けたり、歯を食いしばったりすることは避けてください。あいうべ体操だけで、歯並びや飲み込みの問題をすべて改善できるわけではありません。
無理なく続けるためのポイント
- 歯磨き後など、取り組むタイミングを一つ決める
- まずは動き方を確認し、回数・負荷は指導に合わせる
- お子さまには保護者が付き添い、できた動きを一緒に喜ぶ
- 痛みや強い疲れが出たら中止して相談する
子どものお口ぽかん・歯並びとMFT

テレビを見ているときに口が開いている、飲み込むときに舌が前に出る。こうした様子に気づいても、毎回「口を閉じて」と注意するだけでは改善しにくいことがあります。
「癖だから」で済ませず、口が開く理由を確認する
口が開く背景には、舌や唇の使い方のほか、歯並びや鼻づまりなどが関係する場合があります。鼻炎や鼻の通りにくさがあると、楽に呼吸するために口を開けていることもあります。
まずは、いつ口が開いているか、鼻で呼吸しにくそうではないかを見てみてください。鼻づまりや強いいびきが続く場合は、耳鼻咽喉科などでの確認も大切です。お口の状態と呼吸のしやすさを分けずに考えます。
小児矯正の相談で伝えていただきたいこと
- 普段から口が開いていることが多い
- 飲み込むときに、舌が前歯の間から見える
- 奥歯で噛んでも前歯の間に隙間がある
- 前歯で食べ物を噛み切りにくそうにしている
当てはまるだけで病気や矯正の必要性が決まるわけではありません。気になった場面を具体的にお伝えいただくと、診察の参考になります。
当院では小児矯正にMFTを取り入れています
ササキ歯科・ササキ矯正歯科では、お子さまの成長に合わせた矯正治療を行い、必要に応じて矯正装置とMFTを組み合わせています。歯並びの形だけでなく、舌を突き出す癖やお口の使い方にも目を向けます。
ご相談後、すぐに装置を使うとは限りません。成長を見ながら経過を確認する時期と、治療を検討する時期があります。「全部の永久歯が生えるまで待つべき?」と迷う段階でも、気になることがあればお聞かせください。
当院の治療内容・費用・期間・リスク:子どもの矯正について
大人の舌の癖・矯正後の後戻りとMFT

「大人になってからでは遅いのでは」と思われるかもしれませんが、舌や唇の使い方を見直すことに年齢だけで線を引く必要はありません。大人の矯正治療でも、必要に応じてMFTを取り入れることがあります。
無意識に前歯を押す癖は、大人にもあります
仕事に集中しているときに舌で前歯を押す、飲み込むときに舌が前へ出るなど、ご本人が気づいていない癖が見つかる場合があります。歯並びが気になるときは、歯の位置と一緒に、舌を普段どこに置いているかにも目を向けてみましょう。
MFTで扱うのは、こうした癖やお口の使い方です。大人の顎の骨格や歯の位置が、体操だけで希望どおりに変わるわけではありません。出っ歯や前歯の隙間などが気になる場合は、矯正治療の必要性も含めて確認します。
矯正後の歯並びを保つには、保定装置も大切です
矯正治療で歯を動かした後は、保定装置(リテーナー)を使って歯並びを安定させます。舌の癖が歯並びに影響している場合には、その見直しも治療後の安定を考えるうえで大切になります。
MFTは保定装置の代わりにはなりません。体操をしているからと、自己判断でリテーナーの使用をやめないでください。後戻りには複数の要因があり、MFTを続ければ必ず防げるとも言い切れません。
「リテーナーが入りにくくなった」「前歯の隙間が以前より気になる」といった変化があれば、まず矯正治療を受けた歯科医院へ相談しましょう。当院でも大人の矯正相談を受け付けています。治療歴がある方は、これまでの経過やお使いの装置についてもお知らせください。
当院の治療内容・費用・期間・リスク:大人の矯正について
むせる・滑舌が気になる方へ|お口の機能を見直す

舌の体操は、歯並びが気になる方だけの話ではありません。「以前より硬いものを避けるようになった」「お茶でむせることが増えた」など、食事や会話の変化に気づくことも、お口の健康を守るきっかけになります。
年齢のせいと決めつけないでほしい変化
舌や唇の動きが弱くなると、食べ物を口の中でまとめたり、言葉をはっきり発音したりすることが難しくなる場合があります。お口の機能は加齢だけでなく、病気やお薬、歯や入れ歯の状態などの影響も受けます。
以前と比べて、こんな変化はありませんか?
- 硬いものを噛みにくくなった
- お茶や汁物でむせることが増えた
- 食べこぼしや、口の中に食べ物が残ることが増えた
- 言葉がはっきりしにくいと感じる
- 口が乾きやすく、食べにくい
これらは相談の目安であり、当てはまる数だけで診断するものではありません。いつから、どのような場面で気になるかをお伝えください。
オーラルフレイルと口腔機能低下症
「オーラルフレイル」は、食べる・話すといったお口の機能の小さな衰えに、早く気づいて対応するための考え方です。一方の「口腔機能低下症」は、複数のお口の機能が低下している状態を検査に基づいて診断する病気です。同じ意味ではありません。
「舌の力が弱いだけ」と決めつけず、噛む力や口の乾き、舌・唇の動き、飲み込みなどを必要に応じて確認します。体操の種類も、その結果に合わせて選ぶことが大切です。
「パ・タ・カ・ラ」で舌や唇を動かす練習
日常に取り入れやすいお口の体操に「パタカラ体操」があります。「パ」は唇を閉じて開く動き、「タ」は舌先、「カ」は舌の奥、「ラ」は舌先を使う動きを意識して発音します。
まずは「パ・パ・パ」「タ・タ・タ」のように、一音ずつはっきり声に出してみましょう。慣れたら「パ・タ・カ・ラ」と続けます。速さを競わず、動かしやすい速さから始めてください。
こうした口腔体操と、矯正治療で行うMFTには共通する動きがありますが、目的や必要な練習は同じとは限りません。特に飲み込みの問題には、状態に合った評価や専門的な対応が必要です。
POINT
むせが続く、飲み込みにくい、食事量や体重が減っている場合は、体操だけで様子を見ないでください。歯科医院やかかりつけ医に相談しましょう。急にろれつが回らなくなった場合や、顔・手足の動かしにくさが突然現れた場合は、119番で救急車を呼んでください。
歯や入れ歯の状態を整えることも、食べやすさにつながります
噛みにくさの原因が、歯の痛みや合わなくなった入れ歯にあることもあります。この場合は、筋肉の体操に加えて、歯や入れ歯の治療・調整を検討します。
当院では一般歯科や入れ歯の診療も行っています。「年齢のせいだから」と我慢せず、食べにくさもご相談ください。まずお口の状態を確認し、飲み込みの問題など専門的な評価が必要な場合は、適切な相談先を含めて対応を考えます。
舌の体操・MFTについてよくある質問

始める時期や効果について、気になりやすい疑問にお答えします。
Q. 子どもは何歳から舌の体操を始めればよいですか?
一律に年齢で決めるものではありません。説明を理解して動きをまねできるか、どのようなお口の状態かを見ながら判断します。小さなお子さまでは、無理に訓練を増やすより、食べ方や生活の様子を確認するところから始めます。
Q. 大人になってからMFTを始めても意味はありますか?
はい。大人でも舌や唇の使い方を見直す対象になります。ただし、歯並びの悩みなのか、食事や飲み込みの問題なのかで必要な対応は異なります。気になる症状に合わせて、体操や治療の必要性を確認しましょう。
Q. 毎日続けると、どのくらいで効果が出ますか?
目的やお口の状態、練習の取り組み方によって異なり、「何日で治る」とは決められません。動きができるようになることと、普段の習慣として身につくことにも違いがあります。回数だけを増やさず、方法が合っているかを確認しながら続けましょう。
Q. 舌の体操で小顔やほうれい線の改善も期待できますか?
MFTはお口の機能や癖を整えるためのもので、小顔やほうれい線の改善を保証する治療ではありません。見た目を変えようと強い負荷をかけることは避け、舌・唇を無理なく使うことを大切にしてください。
まとめ|子どもも大人もお口の悩みをご相談ください

舌の体操は、お子さまのお口ぽかんや舌の癖だけでなく、大人の矯正治療や、年齢とともに変化するお口の機能を考えるきっかけにもなります。大切なのは、今のお口に何が起きているかを知り、目的に合う方法を選ぶことです。
子どもの歯並び、大人の舌の癖、毎日の食べにくさ。同じ「舌の体操」でも、必要な対応は一人ひとり違います。
ササキ歯科・ササキ矯正歯科は、一般歯科と矯正歯科を併設しています。久屋大通駅セントラルパーク1A出口すぐの当院へ、気になることをお聞かせください。ご予約の際に「子どもの口が開いている」「矯正後の舌の癖が気になる」「食べにくくなった」など、相談したい内容をお伝えいただくとスムーズです。
矯正歯科:052-961-0033 / 一般・小児歯科:052-684-7887
※記事内の体操は一般的な例です。個別の訓練内容・適応は診察で判断します。イメージ画像は実際の患者さま・診療風景ではありません。
ササキ歯科・ササキ矯正歯科では、患者さまのお話を伺い、現在のお口の状態を確認したうえで治療や予防の方法をご説明しています。

院長・歯科医師
佐々木 智章
略歴
- 2010年
- 愛知学院大学歯学部卒業
- 2011年
- 愛知学院大学臨床研修医
- 2012年
- アップルデンタルクリニック勤務医
- 2014年
- ササキ矯正デンタルオフィス勤務
資格・所属学会・セミナー
- 歯科医師
- 愛知県歯科医師会
- 名古屋市東区歯科医師会
- MDIベーシックコース/MDIインプラントコース
- ストローマンインプラントコース
- CAD/CAM Curving & Polishing/CAD/CAM Preparation & Training
- アストラテックインプラントシステムベーシックコース
- 顎咬合学会/LCDCベーシックコース
佐々木 美枝
副院長・矯正歯科医
佐々木 美枝
略歴
- 2012年
- 朝日大学歯学部卒業
- 2017年
- 朝日大学大学院歯科矯正学講座卒業
- 2017年
- 朝日大学医科歯科医療センター ポストドクター
- 2022年
- ササキ歯科ササキ矯正歯科 常勤医師
資格・所属学会
- 歯学博士
- 日本矯正歯科学会認定医
- 日本矯正歯科学会
- 近畿東海矯正歯科学会
